「北極星を目指して」 (左脳のひらめき)

I'm your polar star in the journey of life.

カテゴリ:氷の刃(神霊&心霊話) > 摩訶不思議100物語


信楽焼 福ひねり狸  SV15-1 20号
ワイコム
(いつもたぬきを見ると、セクハラだと思いながら、金玉を触ってしまい、家族に怒られる)

こんにちは。


うちには、こういう言葉が存在する。「たぬき道」「たぬきに化かされた」等。ごく普通の状態で、ごく普通に、やってきたつもりだが、何の因果か、泊 まるホテルだと車を止めた場所が、「葬儀場」だったり、見知らぬ神社だったりする時に、家族全員で、心の奥底から湧き上がる違和感を、必死に押さえ込む言 葉である(苦笑)。

違和感はある。普通にある。ちゃんと持ってる。

道なき道とか、人知らぬ道とか、通ってきちゃったときには、遠慮なく、「今日お父さん、またたぬき道通っていくの?」とか「今通っている道、たぬき の道だね」とか、そんな感じで使う。不安感バリバリのところを通っていくのが、主人スタイルで、ほんと、時々思うんだけれど、なんで、こんな普通の場所な はずなのに、山道かと思うような場所があるんだろうと。

そういう道に好んで呼ばれるのが主人である。長男のナビゲートをすっ飛ばし、独自で考え付くルートなのだが、時々、やっぱり、化かされることがあって、一時間近く、目的地周辺とか、家へ帰る道辺りで、グルグルグルグル、その場所を回っていたりする。

無論だけれど、通っている道は、23区でも、区外でも、不安感を誘うような山道いでたちスタイルだ。

前は、富士山に行こうとして、グルグルグルグル周り続け、結局到達したのが、夕方の4時半だったことがあった。この時は、あまりに主人が、クルクル と、おまわりをしているので、あきらめ切った私が、運転を変わって、勘で、場所の抜け道を探した。すると、目的地は目の前だった。結局、12時半から、ク ルクルと、目の前に施設があるにもかかわらず、わたしたちは、おまわっていたという有様である。

おまわるという言葉は、おまわりさんが、周回するその様子から、自分たちが、今度こそ、たぬきに騙されないように、警戒していくぞと言う意味合い で、クルクルが始まりだして、ん?という疑問が心に出てきたら、使い出している。また、おまわりしているんじゃないのとか、そういう感じで使っている。

 

ちなみに、コトの奇異さに、最初に気がつくのは、次男である。

 

彼は早く目的地に着きたいので、コトの奇異さによく気がつく。二番目に気付くのは、わたし。三番目は、長男。

 

ちなみに、四六時中、化かされている主人は、気付く事自体が遅いのである。既に日常になっているというか、時々仕事でこんな事を呟いている。

 

「しまった。どこそこの書類、たぬきにやられた。」

 

たぬきのせいで重要機密書類がなくなるようでは、世の中はまだ、捨てたもんじゃない(苦笑)。

 


昔から、たぬきは「マッチを擦る臭い」と、タバコ臭が嫌いだとは聞く。






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ヒュッテは夜嗤う 山の霊異記 (幽BOOKS)
安曇潤平
メディアファクトリー
2013-05-31

こんにちは。

暑いしね。怪談・・・・じゃ怖いから、ごめん、少しイージーな心霊話で行こうか。

主人と結婚する前、父がよく旅行が好きで、家族で色々な所に泊りに行った。オーナーズクラブって所にも、会員制の所から、国民宿舎それこそ、山小屋まで。 兄さえが嫌がったのは、海辺の民宿。流石に、分からないはずの兄でも、「怖い思いをしたと言う」。一晩中うるさかったのは確かだった。

で、父は見事なまでに、心霊案件の場所を借りてくる。個人的に旅行って言うと、「あぁ、夜眠れない日々の続く時だ」と、子供心には思うわけです。山小屋なんて、もっと凄 いのね。ほんと、靴が人数以上あった夜中にはさ、どうしたらいいか、考える方がイケテなかったし、使われているスリッパが、人数以上出ている時には、(自 分は元より使っていない)、もはや、自分で考えつく事は、神様、「安眠をお恵みください」か、「温泉ピンポンでの優勝を祝福ください」しかないわけです よ。

主人と結婚して、最初の年、新婚旅行先は主人が選んだんですね。素敵なロッジで、今考えると、空恐ろしい値段なんですが、良かったんです。気を良くして、わたしが取った宿は、日本でのある高原ロッジ。

ロッジに入った時に、主人と感じる違和感があってね。そのロッジ周辺が、確かに「ちょっと前には、にぎわいを見せていた痕跡」があるのだけれど、何でか今日だけ、誰もいないんですよ。しかも、ロッジの人も驚いてね。予約入れて確認したのにおかしいぞってなりましてね。当然ですけれど、大きいお風呂もお湯が 入ってなくて。

そもそもロッジですから、部屋別にはお風呂がついてない時代でしてね。

まぁ、お風呂入れましょうかと言ってくださって、お風呂にお湯が張られるんですが、そのお風呂も凄く冷たい水が入っていて、主人と共に、その晩、ガタガ タ、震えながら過ごし、翌日からの予約をキャンセルして、他に逃げたんですね。のちに分かるんですけれど、行った時には、倒産してたんですね。

そんなんで、山小屋もロッジも辞めようって話になって、その後また10年位経って、主人と山に行こうと言う話になって、その前に母と行く事にしたんですね。やっぱ、ロッジです。

やっぱり期待通り、夜中、部屋の戸が叩かれるんですよ。開けると人はいないのもお約束です。勝手に戸が開くのもお約束です。スリッパが、入った方に向いて 脱いであって、いつまで経っても開かないトイレがあるのもお約束。「お前ね、そんなに慌てるけれど、山小屋ってのはこういうモノなのですよ。」と母に言わ れながら、それでも一泊3万払っただけに、悔しい思いはしたんですね。けれど、母が言うんですよ。

そもそも、山なんて危険性のある所、湖なんて悲しい記憶のある所に、金払って泊りに行く事自体が悪いってね。

つうか、お母さん、私は山てっぺんの山小屋に泊っていないって。平地の山小屋だって。それこそ、これから登りに行く人か、下りてくる人ご用達場所だって。とは言ったものの、母は涼しい顔。わたしは寒い顔。

まぁ、それでも、山の近くでご幼少をお過ごしになった母と、私のように工場の排気ガスの中を生きてた人とじゃ話が違う。そもそも、わたしの子供時代の頃の目黒 川は、真っ黒で汚かったし、渋谷に渋谷川ってあって、それを地下に埋めた事とか、現在の、母の近所の玉川上水をどうしたかとか、そういう記憶を持っている わたしと、綺麗な水の出る場所に住んで育った母とは、感性が違う。

で、ほんと、わたし、今までもそうなんですけれど、自分で探して着た物件、殆ど「出る」んですよ。もう、悲しいまでの的中率で。空いてないとネットでみても、 念のため、電話掛けてみると、「空いてる」実情で100%素敵な案件。しかも、時折、うすら寒いを通り越して、空恐ろしい感じで、息子らビビりまくりなん ですね。

もう、主人から、「ロッジに泊りたくても、山小屋風で我慢しなさい」って言われましてね。現在、山小屋風で我慢ですわ。それでも、割と自分で選ぶと出るん ですよ。もう、情けないやら、何故、わたしのお泊り検索エンジンには、心霊物件しかヒットしないのか(苦笑)、そっちの方が不思議でね。

巷に安いシステム、あるじゃないですか。あれも、一通り検索して泊ったんですけれど、自分が選んだ時は、幾ら宿の評判が4.5以上であっても、もう信用で きないし、既にうちの人の信用失っていますね。うちの子供達、それでも、結構幽霊物件に耐性がついているんですけれど、それを通り越すうすら寒い物件に出 会ってしまうので、もう私は宿探しは辞めました。一応、泊り宿は、主人が代わりに調べるとなっていて、その中の、不文律には、

「我が家では、山小屋に家族で泊りに行かない」

とはあります。

それで、うっかり泊まっちゃった後日談は次へ。


ぼっけえ、きょうてえ (角川ホラー文庫)
岩井 志麻子
KADOKAWA / 角川書店
2012-10-01

怪談狩り 赤い顔 市朗百物語 (幽ブックス)
中山 市朗
KADOKAWA/メディアファクトリー
2014-07-18

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ヒュッテは夜嗤う 山の霊異記 (幽BOOKS)
安曇潤平
メディアファクトリー
2013-05-31

おはようございます。

先程まで寝てた。いや、普通は夜中三時半過ぎは、誰でも寝ている時刻である。

 

突然、気配がした。

 

ふっと、目を開けてなんだろうとふとんに潜っていたら、宿の別室から、いきなり電子音が鳴りだした。

 

音階は、おじいさんの古時計の曲の、今はもう、動かない(ここ溜めて)おじいさんの時計と調べを奏でた。

 

動いている電子機器は、全て山小屋の一室に集めてから寝た。携帯の着信音ではない。他の部屋の家電はみんな電気コードを抜いたはず。

あっちでひとり鳴るものはない、と断言できる。

じゃ、何が鳴っているんだろう。

長男は、電子音を聞いて起きてこう言った。

お母さん、メール来ているんじゃない?

息子はまた、寝返りを打って寝た。

 

いや、ひとり取り残されて自室で思うことは、何も動く電化製品がないこと。というより、フレーズの妙な溜め感に違和感を覚えた。機械的ではない妙な溜め感に、うすら寒い恐怖を覚えた。

ひとしきり、布団で考えたが、かなり怖いので、見に行くこととした。

やはり、電化製品は動いていない。そもそも、山小屋なので、寝る前に電化製品を切ってくれとたのまれていたし、確認しても、コードがぬけている。

 

これに、似た現象には出会った事があるし、あの時もうすら寒い恐怖を覚えた。

昨日は、感じでしか分からなかった山ノ神。

 

アラームが鳴って一時間したら空が明けてきた。

 

 

ちなみに、山小屋には時計がない。

 

嫌だ(涙)こういう地味な怖さは。

だから、お盆に泊まるところがなくて、やまごやをチョイスせねばならなかった時、家訓を思い出したのだ。

 

実母は言う。山小屋はそういうものなのです。

 

 

あれは、昭和の出来事かと思ってましたよ。お母さん。

 

 

PS:家訓についてお問い合わせがありました。家訓はこちらをどうぞ。リンク先参照 まさに、冷え冷えする家訓です(大号泣)。




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こんばんは。

正直に言えば、山なんて所詮、神社があろうと普通の山だと思っています。だから、何かあっても、それはいい方向に向かう為に自分がそぎ落とす必要のある事象が出てきたんじゃないかといつも思っています。

昨日、月山の所で本格的に宿泊していたんですね。地デジが届かない、携帯の電波も悪い場所なんですね。で、人の思念すらないんですよ。まぁ、そういう場所 が月山にあるんですね。だから、自身の持つ感能力が全く役に立たない。そこから、人を透視しようと思っても、出来ないし、何も聞こえない。私が如何に、サ イキックで普段暮らしているか、普通に戻る感覚ってそこにあるんですよ。

昨日の晩ですかね。息子と主人があっという間に俊足で寝入っちゃったんですね。私はその前日に、霊障を祓いに出かけて、祓うんじゃなくて、自身に吸い込んで来たんですね。祓う以上に大きいものだったんで。

で、お風呂場で、丹念に祓ったと。ここは、感能力じゃなくて、能動力が大きく働くんだなと思いながら、背中にこびりついた今までのモノもみんな含めて、快感が走るほどに(失笑)祓ったと。

主人達の寝入り方が、あまりにおかしくてね。昼から夜になると、どんどん、自信に寒気が増してくる。こりゃ、一瞬、霊障スタートかと思うほど、私はゾクゾ クしてきて、だけれど、霊とか何かとか一切視えないんですよ。だって、恐ろしいほどにいないんですし、電気がないから、水気があったって、霊なんか出てこ ないし。

で、そのまま、背筋が冷たくて、分かってたんですよ。これは、この山にある「霊性」と言うものの中に自分がいるんだってね。だから、馴染むのが一番だろうと思ったんですよ。

その時ですか、窓に明るい光が差し込んで来ましてね。車のライトだと思ったんですね。その光は、こちらを覗き込むように、垂直に差し込んでくるんですね。ユラッユラと動いているんです。

瞬時、耳を澄ませて、車の音や人の歩く音を拾おうとしました。しかし、元々、音なんかしないで、いきなり光ったんですよ。巡回かと思ったんですが、その場合、光は、高床式のロッジに当てる光なら、下から当てるから、「上向き」に向くはずなんですよ。

で、思い出したんですね。ロッジの裏は、車も通らない「森」だったってね。


んなもんで、その光が揺れ動いて、消えたんですね。
それから、私ですが高熱が出てしまいまして、だけれど、死ぬ気で何だか湯殿山に行くべきだと思ってさし当たって、湯殿山神社を参拝したんですがね。そのま ま、現在も高熱に至る・・・と。ずっと夢現の中で、熱が出て灼熱状態も味わうんですが、自分としては、これは低級霊とかいう波動ではないので、馴染んでお こうとは思うんです。ただ、・・・。猛烈に厳しくて、それでちょっと思い出したんですが、ピタゴラ「不思議」スイッチで、私が見た「山ノ神」という存在が あるんですが、かなり似ています。

火の玉ってのは、赤黒い面もある光なんですよ。灯りで言うと、割合、電熱ライトみたいな、火の燃えた感じですよね。今回のはね、蛍光灯パルック以上の明る さと熱を持たない光の色なんで、あぁ、随分やっぱり存在によって、「色も熱感」も違うんだと思いつつ、まだ熱が出ているんで、寝ます。

来年は行かないかと聞かれたら、やっぱ行きますと言うと思います。
バッチは飲んだのかと聞かれたら、持っていったんですが、ミムラスがここぞで出る場面なんですが、申し訳ないほどに、怖さの方が勝ってしまい、飲めなかったです。

見えないものの正体は知っているからこそ、飲まないで乗り越えようとして、熱も出ているんですがね。まぁ、飲んだって緩和にしかならない。能力に驕っている自分を戒めるためにも、甘んじて、この熱も受け止めておきます。





PS:ちなみに月山で人生ゲームをしたんですが、恐ろしいほど、儲かり続け、「ご神木でできたウクレレ」をアイテムに持ち、子供二人で一位で上がったんですね。で、主人がこそっと・・・「そのまんま じゃん。」て(苦笑)恐ろしくは儲かってはいないんですが(笑)。
黒い遭難碑 山の霊異記 (幽BOOKS)
安曇 潤平
KADOKAWA / メディアファクトリー
2013-06-13

赤いヤッケの男 山の霊異記 (MF文庫ダ・ヴィンチ)
安曇 潤平
KADOKAWA / メディアファクトリー
2013-06-13

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バスター・キートン傑作集(3) [DVD]
バスター・キートン
アイ・ヴィ・シー
2004-08-01

こんばんは。

きいちゃんは、私の兄のあだ名である。彼は、バスターキートン(リ ンク先動画)が好きで、彼のアクションを真似するところから、キートンのミニチュア版ということで、きぃちゃんになった。きぃちゃんは、朋兄であるところ から、非常に無茶なアクションを取って見せることがあり、何と、昔は、布団を下に引いておいて、3階から飛び降りてみるという離れ業を使う人でもあった し、足に魚の目ができたとして、いきなり、自分の足をナイフでえぐって、妹を失神させた人間でもある。

きぃちゃんは、プラモデルが大好きで、小学校三年生までの夏は、虫かごを抱えて、目黒にある「角田の森」に出かけていく人だった。

角田の森とは、とても広大な敷地を持っていらっしゃる人がいて、庭に自生の林があった。林というより森。そこに行くと、本当に色々な虫が採れる。 きぃちゃんは、目黒に住んでいた時代、そこの敷地に住まう老人に話をして、遊びに行かせて頂いていた。朝早く起きて、虫をチェックし、学校から帰ってきた ら、虫かごを抱えて、角田の森へ。明けても暮れても、きぃちゃんの頭の中には、虫しかなかったのだが、きぃちゃんは、小学校四年生になって、青山にある昆 虫標本を作るお店の導きもあって、やっと大きな、昆虫標本を作った。そこでやっと、虫を止めて、今度は、プラモデルに熱中するようになった。母方の実家に 行っても虫採り、魚釣りキチガイのきぃちゃんを満足させた森は、その後、この老人に、跡取りがいなかったために、現在、国有地化されている。

 

さて、ぷらもに目覚めた、きぃちゃんの向かうは、渋谷模型。

 

もう、きぃちゃんのことだから、多少は、キ印(キチガイという意味でうちでは呼ぶ)なので、このコレクションにはまったら、制覇するまでがきぃちゃ んのドリーム満載なわけ。きぃちゃんは、極めるまで、諦めるという事を知らない。そういう全ての意味をこめてのきぃちゃんなわけだから、きぃちゃんは、お 小遣いを貰って、殆ど暇な日は、模型屋に、あれこれ、目論見をしに出入りしていたのだ。

そこへ、妹の私に「プラモ作ってみたい」と言い出されて、きぃちゃん、小学校六年生になったころ、2年生の妹を連れて、渋谷模型に行く事となった。 時は夏。うだるような暑さの中、実母は倒れて、かなり憔悴気味。私たちに、お金をくれて、しばらく、渋谷模型に行ってこいという。きぃちゃんにしてみた ら、もうラッキー。きぃちゃんは、奇しくも、中学受験の勉強を始めたところなので、少々ストレスがあった。(彼は、小学校6年生の春に中学受験勉強を始め た)

そこで、二人で、渋谷模型を訪ねた。お金持って。

ところが、その日、きぃちゃんが「ちわーっす」とお店に入ると、店員さんが、きぃちゃんを一瞥したっきり話しかけても来ない。しきりにきぃちゃんの 後ろを見て、あん?って感じで黙っている。きぃちゃんは、咄嗟に思ったという。これは、妹の朋が邪魔なんだ。朋がいなければ、もっと楽しい話が出来るの に。きぃちゃんは、瞬時に考えた。朋にお金をやって、ジュースを飲んできてもらおう。そしたら、楽しく過ごせるし。

「朋。70円やるから、チェリオを飲みに行って来い。」

「え?兄ちゃん。わたしも今日は買いに着たんだよ?」

「いいから。いいから。朋、いいのを選んで置いてやるから、行ってこいよ。俺は、妹がかわいいから、チェリオを飲ませたいんだ。」

「そっか・・・。んじゃ、私、チェリオ飲んでくる。兄ちゃんお金頂戴?」

 

さて、邪魔な妹を排除した後は、きぃちゃんは、待望のマニアタイムを迎えるはずだった。

 

・・・・・・・・・・・しかし、邪魔な妹がいなくなっても、相変わらず、店員さんは、無言だったという。きぃちゃんは、不思議に思って、色々話しか けてみるんだけれど、店員さんは相手にしてくれない。しきりに後ろを見て、あん?という感じで佇んでいるだけだったという。きぃちゃんの頭の中は、邪魔な 妹がいるんじゃないかと思って、振り返ってみたけれど、根が単純な妹は、チェリオを飲めと言われたら、確かに、例え、渋谷中歩き回っても、チェリオを探し て飲むようなそんな子であるので、帰ってくるような気配はない。

んじゃ、なんで今日は相手にされないんだろう。軍資金もあるのに。

 

きぃちゃんは、そこで、なんで、今日はあんまり教えてくれないのかと聞いてみたという。すると、店員さんは、今日はせっかく、親子連れで着たんだか ら、親子で買いなさいとそんな、わけの分からない話をする。きぃちゃんの頭は???になった。今日は、妹と二人で買いに来た。いつものように眺めているだ けじゃない。買いに着たんだ。大人とは着ていない。

ところが店員さんは、きぃちゃんに、何度も、そこに居る親御さんに聞きなさいという。

「あの・・・・僕、今日は親と着ていないんですが。」

「ホラいるだろう、あそこのコーナーに立っている人、お前の親だろう。」

「違います。僕の親は、今日は寝ているし、第一、あんなどこか、吹っ飛んだ外見じゃありません。」

「さっき一緒に着ただろう。妹さんと三人で。」

「うちの人じゃありません。」

「んじゃ、誰なんだろうな。」

「知りませんよ。」

その吹っ飛んだ外見の人は、きぃちゃんが、緑のコーナーに移れば、緑のコーナーに来て、赤のコーナーに行くと、赤のコーナーに来る。

きぃちゃんは、完全に怖くなってしまった。知り合いではないし、妹を連れて早く帰ったほうがいいんだろう。妹はどうした。あぁ、チェリオなんて言わ なきゃ良かった。あいつは、チェリオを飲んでこいと言うと、本気でチェリオを飲めるまで、歩くような子だ。まさか、道玄坂や、宮益坂、あっちこっちフラフ ラしてないよな、大丈夫だよな。というか、KYな妹よ早く帰れ。

きぃちゃんは、プラモに熱中した振りをして、やり過ごすこととし、妹が戻ってくるのを待ったという。心細くて辛かったと後に語るところを見ると、余 程堪えたのだと思う。しかし、きぃちゃんがきぃちゃんなところは、店を出て行って、妹の行方を捜すのではなく、プラモは見つつ、怖い思いをしてまででも、 妹を待つことだった。

程なくして、妹が戻ってきた。

「兄ちゃん、チェリオ飲んできた。美味しかった。あれは美味しいね。」

店内に入ってきた妹に、さっと、兄であるきぃちゃんが近寄って言った。

「あのひとがぁ、近寄ってきてぇ、困るんだよぉ。」(テンパっている)

 

・・・・・・・・・・・爆裂天然妹は、そこをさっと見て、きぃちゃんに言ったという。

 

「おにいちゃん。傷痍軍人でも、幽霊は幽霊だよ。そんなんに、驚かされてどうすんの。」

 

 

・・・・・・・・・・きぃちゃんの見た吹っ飛んだ外見は、妹の朋からしてみると、明らかにわかりやすい傷痍軍人であった。しかも、生きている率が極 めて低そうな外見なので、妹は即座に、幽霊認定として、構わなくなってしまった。きぃちゃんが、え?幽霊?って思ったときには、既にお店から、その姿あっ たものがいなくなっていた。

 

きぃちゃんは、それから無言になり、わたしのためにプラモを選んでくれたんだよねと言う妹に分けのわからない事を言いはじめた。そして、プラモ屋さ んから妹の手をつかんでダッシュで出て、家に早く戻った。母親は怒ったが、きぃちゃんは、その晩、高熱を出してわけわからない事をわめきながら寝込んだ。 わたしには、きぃちゃんがプラモ屋に行って、熱を出して寝込んだという記憶しかないのだが、後々、きぃちゃんに聞いてみると、そういう話だったらしい。

 

きぃちゃんは、それっきり、わたしをプラモ屋に連れて行くことはなくなり、夏を境目にして、きぃちゃんは、受験で忙しくなり、気がつくと、彼の興味 は、よそに移ってしまったので、プラモへの情熱は、疎かになってしまった。でも、きぃちゃんは、未だに、朋とどこかへ行くとろくなことがないとは言う。

 

きぃちゃんの夏。日本の夏。奇しくも、実は、あの日は、終戦記念日だった。

 

 



戦争と怪談〈上〉
山田 盟子
新風舎
2006-08


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こんばんは。

この話は、きぃちゃんの夏の続きなんですけれどね。

実は、プラモ屋から帰ってきて、わけわからない事をわめいて、高熱を出したきぃちゃんに、うちの亡き父が、行ったことがあった。あまりに、手馴れているので、その記憶があるんですよ。

父が帰宅してみると、きぃちゃんは、ぐったりしていたと聞きます。すると、父は即、自分の書き物机に向かい、そこに置いてあった大学名入りのレポート用紙を一枚めくって、万年筆を取り出してこう書いた。

 

「現実」

 

父はそれを器用に折りたたみ、きぃちゃんに持たせたという。そしてきぃちゃんにこういう風に言ったという。

 

「きぃ。現実を握り締めている人は、一番強いのだよ。きぃ。しっかりと、握りなさい。しっかりと握って、あの世の地獄から、この世の地獄である現実へ帰ってきなさい。地獄はどこも同じだ。」

 

きぃちゃんは、そのまま、うんうん、頷いて、そのレポート用紙を握り締めた。

 

「現実を握る。今は現実なんだ。現実なんだ。」

 

そして、きぃちゃんの熱は下がったそうだ。という後日談を後で聞いた。

そう言えば、私が、高校生の頃、わけわからなくなって、わめいてたときにも、父が平気な顔をして、原稿用紙に、

 

「現実」

 

って書いて握らせてくれましたっけ。あれは、父は父なりの苦肉の策だったんですね。

 

いや、それが効いたかどうかは、やはり、発動する人と、受け取る人との信頼関係に基づくわけだから、きぃちゃんは、父を無性に怖がっていたところがあるので、よく効いたけれど、高校一年生のわたしには、あまり効かなかったっけな。

父を思い出すとき、どうしても、レポート用紙に書かれた「現実」と言う言葉を思い出すし、万年筆を思い出す。

 

そういう理由があったんだな。

案外その当時のわたしには、変で意味深なラベルの酒をもったいぶって、奥から出してきて、ちょっと飲ませてくれるほうが、効き目があったような気がする(苦笑)。

 

 

 

兄より連絡を貰い加筆修正しました。


怖すぎる実話怪談 冥府の章 (文庫ぎんが堂)
結城伸夫+逢魔プロジェクト
イースト・プレス
2014-07-10

実録 お寺の怪談
高田 寅彦
学習研究社
2008-08



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こんにちは。

怖いもんなんかないって言っておきながら、結構自分ひとりで宿に泊まるのは、嫌だったりします。会社で出張を命じられた時も、海外であろうが国内であろう が、ちょっと嫌だった。まず、夜、お風呂に入るのに抵抗があった。けれど、抵抗があろうとなかろうと、割と体を温めておかないと交感神経が優位すぎて眠れ ない性質ゆえ、何とかその、鳥肌の立つ風呂に入った。温まるまでに時間がかかった。

出先に、寺があったり、神社があったりした時には、取り急ぎ数珠を買った。

だから、我が家には割りと、数珠のコレクションがある。東大寺で買ったり、法隆寺で買おうと思ったけれど、逆に怖くなって買うどころか、逃げ出したこともある。法隆寺の閉店間際時間は、わたしにとって、ちょっと恐怖を呼んだ。

さて、春日大社から、何でも時間を見つけて空き時間に行った。けれど、結果的には、夜、風呂に入っている時の鳥肌感は、全然ぬぐえなかった。まぁもっと も、「ガチ 新倉イワヲの世界 キター!」って考えていたから、祓おうとかそういう概念もなかったと思う。一辺、宿で、実は塩を用いたことがある。塩風呂 に入ったんだ。温まり方が違う。故に、よく出先に出るときには、塩を持って行く。

時々、今では実母と旅行に行く。ほんと、この人、よくそういう目に遭いやすい人で、しかも、全然なんとも思っていないのが、幼い頃から不思議に思っていた事だった。ところが、先日、一緒の旅行に行ったら、実母がこう言う。

「お前ったらすぐ寝ちゃって、あれから随分怖い思いを・・・・」

???いや、先に寝ちゃったの、お母さんです。わたし、あれから、四苦八苦して、出先の旅館の霊道を何とかしようとしていたんで、違うと思うんですけれど。

「お前は、いびきをかいて、それがやけに気になるいびきでねぇ。」

すいません。うるさかったんですか、というか、いびきかくような事、私あんまりないんですけれど。

「危ないと思わせるようないびきでねぇ。」

??????誰のいびきなんですか。わたし、枕元に、おっちゃんが一人立っているのを知ってて寝ちゃったんですけれど、それですか。わたし、割と、魑魅魍魎にまみ れても、部屋に誰かいるだけで、安心できて「熟睡」してしまうう傾向があるんですが。結界を張っても、全然自分が寝ているときは無駄だと思うので、人がい れば「寝ちゃうんですが」。それが何か、お母さん。

結局、実母と旅行に行っても、割とそういう事が起きる確率は高いので、あんまり実母とは行きたくない気がする。だからと言って、姑はもっと最高の「自覚症状あり」のエンパスで、霊媒体質だから、逆に、一緒にいると、迷って、いきなり人の墓の前に出たりしてしまうので、これまた、ご一緒を避けたい。

主人はもっとひどいでしょ?深夜の廃屋とか、深夜の不気味な神社に、「着いたよ」と言って乗り付ける人なんですから、これまたあてにならない。次男は、思いを「増幅」させる事をしてしまうので、これまた、わたし自身が落ち着かないと、無闇に「増幅」されてしまう。うまく上手に彼を使えば、結界が強固になる。失 敗したら、もはや、魑魅魍魎でどうもすいませんって事となる。

前に、子供達だけと旅行に行って、旅館のカーテンが意味もなく揺れていた事があったので(ピタゴラのどこかに書いた)、子供だけって事もある意味、リスキー。

で、絶対寝ない場所もある。窓際とか、寝ない(苦笑)。だって、外から来るお客さんと、現在室内にいるあてのあるお客さんと、どっちを対応したほうが寝やすいかって行ったら、現在部屋の片隅でたたずんでいる人のほうがはるかに楽。

という訳で、かといって、自分ひとりだとその技が使えない。しかも、友人と泊まるのなら、却って半狂乱を呼んだこともあるが故に、最近、友人から、子供連 れて修善寺とか、軽井沢とか「お泊り会」しようよと言われるが、かたくなに断っている。本音はお泊り会したい。けれど、修善寺も鎌倉並ではないけれど、ギ リギリ路線だと思う。軽井沢は、結構ツボでしょう。

んな訳で、どこか気分転換に、ひとりで旅行に行っておいでよって言われるけれど、泊まるところが怖くて行かれないヘタレお母さんでありました。ちなみに、 ヘタレ母の選ぶ宿は、100%保証つきの「出る宿」ばかりです。トクーサイトでは、既に連戦連勝なので、逆にHIS、JTBに斡旋してもらっても、やっぱ 高確率で当たります。もう、出ないところないのかな。

そもそも、自分が呼ばれやすいんだけれど。




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メリーさんから電話
アプリアカデミー
2013-09-06

こんにちは。

わたしが若い頃、あった実話なんですけれどね。
家の電話が黒電話だったんですね。で、ダイヤルを回すばかりなので、面白くなくて友達から「プッシュ式」の電話を借りてくるんですよ。

黒電話の上にプッシュ式のモジュラージャックがあったんで、それを差して使ったら使えたんですね。面白かったので、プッシュで友人にかけたり、プッシュ式 で受け取れる情報を取ろうと、父と目論んだのですが、残念ながら、回線自体がダイヤル回線だったので、それは出来ない事となりました。

主人と付き合いだした時、伝言カードってのがありましてね。主人がある所に電話して、留守電を残したら、わたしが後で受け取りの電話番号に電話して、暗証番号をいれたら、それで留守電が聞ける、または追加の留守電を残せるってカードがあったんですね。

まぁ、そういうようなモノの先駆け商品が出ていた頃に、興味を持った父とわたしと兄は、それで結構様々なものを自宅でやってみたかったんですね。

けれど、色々試すうちに、使えない事が分かり、そのまま放っておいたんですよ。

ところが、その後、兄がいて、父と母が留守宅の時、電話が急に普段の音ではない音で、鳴りだしたんですね。わたしはその時、兄が、NTTの3ケタの番号でのテスト番号にかけて、後で鳴り返してきたのを聞かせてビビらせようと思っているんだなと思ったんですね。

まぁ、当然ですが、出ても誰も答えない。

「おにーちゃーん。あのさー、馬鹿にするんじゃねーよ」と言いかけて、そう言えば、兄は電話のない2階にいる事に気がついたんですね。受話器を下ろして、 そうしてしばらくしたら、また鳴りだす。それも、普段の鳴り方ではない。けたたましく鳴っている音に、兄が興味をひかれて降りて来て、「お前何やってんだ よ」と言い、「お前、両方の電話を繋げておくから、かかってきた時に電話が混乱するんだよ。その緑のプッシュの方外しとけよ。誰か、かけて来てるんじゃ ねーの。」そう言うんです。

やっぱ、煩いし、親戚がかけてきたのなら、一大事ですからね。急いで鳴り響く中、その電話を外した。

「お兄ちゃん、外したよ。」

けれど、ジャックを引きぬいて一旦切れた電話の音は、やはりもう一度鳴り始めたんですね。兄は、試しに自分の近くに合った黒電話に出た。「音しないじゃんか。お前が、ずっとプッシュなんか差しとくから回線が混乱しているんじゃねーの、電気故障じゃねーの?」

「お兄ちゃん、音鳴り続けているのは、お兄ちゃんの持っている黒電話じゃなくて。」


「緑の電話か。」


「うん。」

「うぇぇぇ。お前、それすぐ座布団の下にいれろ。」

「うわぁぁぁ、お兄ちゃん、座布団で包んだけれど、鳴りやまないよ。」

「お前その上に乗れ。」

「やだよ。これ借りてきた奴だよ、壊れたらどうすんだよ、兄ちゃん。」

「壊れるとかの問題かよ。これはな、今から段ボール持ってくるから、箱に入れて、裏の倉庫に置いてこい」

「早く兄ちゃん。早く早く。急いでよ。」

結局、一時間近く鳴り響いた電話は、その後兄が急いで探して来た段ボール箱に入れる前に、鳴りを潜め、わたしはそのまま貸してくれた友人に電話で「あのさ、変な事聞くんで悪いけれど」と聞く事とした。兄が横にいて、指示してきて、兄妹、タッグを組んで友人に聞く事とした。


しかし、友人はいとも簡単に笑って言った。

「あっ貸す時、言い忘れたんだけどさ。それ繋いでなくても、いきなり勝手に鳴るんだ。修理したんだけれどね。何で鳴るんだか分からないんだ。あっ返す? しょうがないなぁ。おまえんちで引き取ってもらえりゃ、よかったのに。電電公社も嫌がって引き取らないんだよ。やっぱ、流石のお前んち、でもダメか (笑)。お前のお父さんに聞いてみろよ、それかお兄さんに。」

「うちの兄に何とかして貰えって?うちのお父さんがなんかできるって?」

兄は激しく首を振った。恐らく一生見た中の3番目位の勢いで首を振った。早く返せとゼスチャーをしてくる。わたしはそのまま言った。


「これ、返す。どの道、うち、ダイヤルだから使えないんだよねー。」

「そっか。」友人はそう言って、即、引き取りにバイクで来た。
そのまま、箱ごと友人に渡し、その電話とはお別れを出来た。その後、自分は、またどこからかのバイト先で、カプラーを借りて来て海外通信までするのだが、その時、自宅の黒電話を、思わず長い間撫でさすってしまった。

そして、長い間、プッシュという言葉にかなり強烈なトラウマが出来てしまい、主人と結婚しても割と長い事、ダイヤル回線で通した。その後、プッシュ回線に 切り替えざるを得なくなった時、プッシュ回線になった途端、その電話に向かって、五体投地にて、思わず拝んだ。「あんな電話になりませんように。」


その後、発明された携帯にて、まさか自分の身にもう一度降りかかるとは、夢にも思わない、あれは、確か高校3年の夏だった。




小林 保
碧天舎
2002-07

怪談
ラフカディオ・ハーン
国書刊行会
2011-07-21

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大病院のこわ~い怪談
柳瀬 義男
講談社
1995-12

こんにちは。

いなや先生とは、わたしが学生の頃に教わった先生で、現在は医学畑で教授になっていらっしゃる先生である。いなや先生は、内科の先生なんだが、色々 と、専門分野があって、彼の専門分野が直接、「命にかかわったり」することが多いので、いなや先生は、せっかくのお休み日になったとしても、呼び出される ことが凄く多かったらしく、若かりし頃は、そりゃ、当直明けの寝ているところへ、「いなや先生、緊急事態です」という電話が来るのが、何より怖かったという。

無論、いなや先生は、一生懸命人を看てくれる医者である。

だけれど、当直明けの時は、割とミスが多くて、だからこそ、いなや先生には、当直明けの休みは大事な休養なのである。そこへ、急に容態が悪くなった入 院患者の連絡や、救急患者で、どうしてもいなや先生にという人がやってくると、いなや先生は、眠れないままに、呼び出されていくことになる。

いなや先生は、その晩もその辺にあったストレッチャーに横たわって、寝ずの番をしていた。

ところが、いなや先生が、寝ていると、ある病室のナースコールがよく点滅している事に気がついた。いなや先生、あそこの患者は僕の受け持ちではない からなぁ、なんか苦しいことがあったら、おったいさん(ナースさん)が呼んでくれるだろうと思って、そのままストレッチャーに寝続けた。いなや先生、その まますぅっと寝入ってしまったのだが、それでもよく明かりが点滅する。その割りに、どういう訳か、おったいさんが、中々病室に来ないのである。

おったいさん、こんなにナースコールで呼ばれているのに、なんで、来ないんだろう。

いなや先生は、そう考えながら、寝入り始めた。あそこの患者、あの病室で、あそこの場所で・・・・・・・

 

 

・・・・・・・・・・うわっその患者、俺の受け持ちのたみやさんではないか。

 

 

いかん、いかん、おったいさん、これをちゃんと対応してくれないと困る。たみやさんは、重度の臓器不全。危険極まりないところで、あともう少しでお迎えが来そうな人だ。ダメだダメだ、おったいさん、ナースコールに応えてくれなきゃ。

 

 

・・・・・・・・・・・・・って、ちょっと待てよ。あれ、勘違いかな。あれ、たみやさんは、亡くなってでてったはずだっけな。あれ、たみやさんは、 どうなったんだっけかな。たみやさんは、違う病室だっけかな、あれ、あれ・・・・考えているうちにいなや先生すっきりと目が覚めて、ストレッチャーから起 き上がった。

 

いや、マジで、あんなにヒカルのやばいって。そう、おったいさんに言いに行こうと、詰め所に行くと、おったいさんがいない。あれ?他のスタッフに、 あれ?おったいさんは?と聞くと、誰もが不安そうな顔をして、おったいさんは、今日の勤務ではないと言う。そっか、今日の勤務じゃないんだ。んじゃ、たみ やさん、ちゃんとなってる?大丈夫?そう聞くと、他のスタッフは怪訝そうに顔をしかめた。

 

・・・・・??ストレッチャーに寝る前に、寝るからよろしくと言って去ったおったいさんは、どこへ行っちゃったんだろう。あれ?俺、色々ごっちゃになっているかな。たみやさんって言うと、おったいさんを思い浮かべるから間違ったかな。

 

そう考えて、いなや先生、そのまま、ある病室で、ずっと光り続けているナースコールのランプの話を、詰め所で話をした。皆、見てない?ねぇ、あれ、結構呼び出されているよ。いなや先生は、そう言いながら、

 

これは・・・ひょっとして、

 

おちがある話(苦笑)に違いないと思い始めていた。

よくある、勘違い話。あるよねー、あるある。俺が、おったいさんの勤怠を勘違いしていたのと同じく、勘違い話あるよねー。ナースコールは、たみやさんじゃないとか。なんだ、俺疲れているのか。結構、頑張っているもんな。

 

話はそこから、実はいなや先生の思ってたおちと違う方向に進んだ。

 

おったいさんは、職場を先月末で辞めていて、実は、ナース服を着て、元職場に忍び込んで、夜、盗みを働いていたのである。それを、重度の状態のたみ やさんが、一生懸命ナースコールを光らせて、教えていたのだけれど、たみやさんは、実は意識不明。ナースコールが押せる状態ではない。なので、どうやって 鳴ったんだかは分からないんだけれど、実は、ナースコールが頻繁に光る日は、

 

おったいさんの盗みの稼働日と一致することが分かった。

 

その後、おったいさんが捕まると、たみやさんは、安心した顔で亡くなってしまったのだが、

 

いなや先生が、異動しても、盗人が出る日には、結構な頻度で、ナースコールを知らせるランプが点滅すると言う。なので、いなや先生は、アメリカに研修で行った先の病院で盗人を捕まえることができたと言う、

 

嘘のようなホントの話。

 

いなや先生曰く、俺は丁寧に看たんだから、心置きなく成仏してくれてもいいだろうと言うが、奇しくも、たみやさんの元気だった頃の職業は、おまわりさんであった。

 

 

 

今から23年前に聞いた話。いなや先生のあだ名が、医局では、とっつぁんなので、どうしてか医局秘書さんに聞いてみた。とっつぁんの理由(銭形警部から由来したんだと言う)を教えてもらえた。

死体は語る (文春文庫)
上野 正彦
文藝春秋
2012-09-20

死体は語る現場は語る
上野 正彦
アスキー・コミュニケーションズ
2002-10


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こんばんは。

割と、わたしは仕事場を「通勤の乗り換えなし」か、「乗り換えがある時は階段の有無」を重視する傾向が昔からある。階段が凄く長いと、若い頃から、登っている 最中に膝が笑った。一時期、乗り換えの時に、凄く長い階段を上らねばならないように駅が改築された時、数日は通った。そして、酸欠が激しく、その職場を諦 めた事が何度かある。

外回りの、沢山の会社のサーバーのメンテナンスも請け負った事があったが、あまりにきつすぎて、当時56キロ位あって少々太り目だったわたしが、その一カ月後 には、疲労でモノが食べられなくなり、痩せすぎて40キロを割り、仕事自体をドクターストップするか、エンシュアドリンクという、カロリードリンクを、一日に三本飲めと 医者から言われた事があった。

神経を使う仕事は、無論だが、中々家に帰っても、交感神経が副交感神経に切り変わらない。兄が、外来を受け持つ時、凄く血圧が上がって、その後、家に帰っ て夜中まで下がらないと言った時、ふーんと思ってた。だが、良く考えると自分もそうだった。ひどく緊張して行う日は、翌朝3時以降まで、体が痛すぎて寝付 けなかった。

基本的に、恵比寿とは相性が悪い。乗り換えが多いからだと思うが、どうも立地的に、萎縮してしまう癖がある。青山は、伸び伸びとできるのだが、時々、夜間、誰もいないけれど、残業が多すぎる日、よくブザーが鳴った。明らかに、カードキーを使わないで入った時のブザーだった。その時は一度面白いので、自分 もカードキーなしで、入ってみた。体熱をセンサーするのか、やはり鳴った。

午前2時を過ぎると、特にあっちこっちで物音がした。寝泊りしなきゃならない時は、シュラフで、遠慮なくフロアに寝て、着替えは常時会社に置いた。無論だが、やはり時々セキュリティがビービーなっていた。その時は、もはや鳴っても怖いとかではなかった。

「まず寝かしてくれ」そう頼んで寝たが、睡眠は一時間しかもたなかった。そして、考えた。その次に起きる事が、身の毛をよだたせた。

午前3時半。歩く音がする。もはや、安眠を妨害しているのはよくわかった。何気なく泊まりたくない意思を会社に言ったら、会社の目の前のホテルを手配してくれた。だけれど、ホテルでさえ夜 中に歩く音がする。夏場はどうしてか、軍人さんが夜中に歩く。目指しているのは靖国だろうと思ったが、分からないので、とにかく、寝かせてくださいとばか り言った。

祓うとか、まずその頃、そんな概念が無かったんで、とにかく、拝み倒した。すいません、寝かせてください。すいません、うるさすぎます。安眠をお恵みください。けれど、あまりに 睡眠不足になり倒れた。

故に、普段は、音が鳴り始めない2時前には、退出カードにして、セキュリティロックをかけて会社を出た。翌朝、7時位に出社する と、そのログに、何かが一生懸命通ろうとした跡があった。めんどくさいんで、関わりを持たなかった。何をしたのかと次長に怒られた時もあったが、自分には 心得が無かった。

どうせ、青山墓地が見えるし、多少は仕方ないと思っていた。ついでに言えば、そんな怪奇現象、ごく当たり前の人間として、実は育っていた。実家の中で睡眠 不足にもなるし、第一、買った二子玉川のマンションで、霊障ドリームが続いた日には、世の中、元々こんなもんだろうと思っていた。

まさか、解消出来るとは思わなかった。けれど、自分が霊能者になってみて、完全な解消は出来ないと思った。地域柄もそうだし、運んでくる人もいる。運ぶ媒体もある。自分は既に、超清潔を諦めた。

けれど、特に色々あったけれど、一番記憶に残っているのは、シュラフで寝た時の、蕁麻疹だった。ダニかと思ったが、違う。今考えると、所謂、湿気に負けた免疫力での、蕁麻疹かと思う。湿気は豊富。サーバールームは、電気の宝庫。

しかし、自分はひどい静電気体質であるにも関わらず、実はこのオフィスでは、一回として電気感受性体質のやっちまう、サーバー飛ばしを行った事が無かっ た。ドサ周りのサーバー管理の時には、ドサ周りした、ドサ先で、ほんと飛ばした。有名な会社が多かったから、飛んだらアウトだった。一生懸命修復した。こ の時は、自覚している時はゴム手袋で行っていた。

色々な事があった青山午前2時。勤務先は、程なく移転した。ちなみに、表参道。出ると22年前から有名な場所がある。先日見に行ったが、今じゃ、もう、その人はいなかった。




PS:ちなみに、シュラフで寝ると時給「5万円」の時間帯があり、どっちを取るか悩んで、シュラフで寝ることを選択し、荒稼ぎした2000年問題でした。



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こんにちは。

割と人は気がつかないんですが、日常のどこそこにでも霊ってのは、条件さえ整えば姿を現すと思うんですね。

わたしの実家は、そういう面で出やすい立地ではあったんですよ。目黒から多摩へ、そして現在23区内に移ってはいるのですが、どうもね、どこも出やすかったんですよ。
目黒の 時なんか、ほんと真夜中にぱっちり目が覚めた、その数分後に、ひねらないとつかない裸電球がついてしまったんですね。そういうのも多かったですし、父と母 が、時間を教えようと思って買ってきた時計があるんですけれど、日取りを真夜中の12時に、パタパタ回転させて、曜日表示を変えたりするんですよ。アナロ グだったので、パネルの音は凄まじかった。人に何かあった時、時間を覚える癖が残った。

それ以上にわたしの父ってのは、割と馬鹿にしたような顔して聞いておきながら、「両親ともに揃って」そういう話が日常にあり、そういうもんはあるもんだと捉えていた事自体が、わたし自身の現在ある由縁です。

わたしの父方には、本家の寺があるんですけれど、そこへ連れて行かれたのはたった一回きり。何でも聞いたところによると、その頃「ルーツ」と言う映画が流行っていて、そ して父が尋ねに言ったらしいんですよ。ろくなメモを持参しないで行ったので、和尚さんに包んだお菓子の、「のし」の裏にメモを取って帰ってきた。その時連れて行かれたのですが、 わたしは、凄く怖かったんですね。その寺に、言い知れない恐怖を感じたんですよ。

なんせ、お堂の方でガタガタ音がする。和尚さんに、「あれは煩いが、何をしているのだ」と聞くと、話を中断された親は怒った顔であったが、それ以上に和尚さんは、大層冷ややかな顔で「この時期はね。あそこがガタガタ鳴るんですよ。気にしないんだよ。朋ちゃん。世の中には、色々なものがいて当然なんだから」

兄を焚きつけて、一緒に探検に行こうと思った。けれど、兄は既に真っ青な顔をして、絶対何しても動かない。いつもの兄らしくないなと思って、ちょっとトイレに行くふりをして、お堂を覗き込んだが、気配はない。けれど、ひとり、向こう側で座っている人がいた。

「あぁ、あの人が、何か掃除をしているのかな」

そう思ったら、安心して眺めていた。安置された沢山のお位牌を、その人がなめていたが、「そうやって綺麗にするもんなのか」と思ったわたしは、正直、馬鹿がつ く程素直だったのだろう。それ故に、見えた者に対して、見えたモノのやる事に対して、素直に受け止める習性があった。別に怖くもなくなり、安心して親の元に戻って、和尚さんに言った。「お位牌って、なめて綺麗にするもんなんですね。」

親はショックを受けた。和尚さんも動じまいと思ってたのか、その時、大人たちはかなりの挙動不審者だった。

けれど、親の聞きたい事は、自分たちの祖先は何をやっていたのか、そして何故、父を連れて満州に行ったのか、そしてそこで何が起きたのか、親目線で何を考 えたのか、何故この家にこう言う事が珍しくないのか、そういう事に終始聞き入っていた。けれど、納得のいく答えは無かったらしい。

帰り際には、またお堂を見たが、その人は、位牌をなめるのを止めて、お供物をなめていた。結構、その人はガタガタ震えながら、お供物をしゃぶっていた。果 物の皮をむかずにしゃぶっているのを見て、和尚さんに、あの人「お腹すいているんじゃないの?」と言った時の和尚さんは、泣き笑いの顔だった。

そして、一家揃って、引っ越しを重ねてそして23区に行く。相変わらず、家の中では、怪奇現象が多く、割と安心した。怪奇現象が起きる家には 割と慣れっこになった。真夜中に歩く音が一階で響く日には、親は、「寝たら絶対に一階に降りるな」と言った。けれど、それも、程なく、 わたしが出て行ってから、頻発する事は無くなった。

その代わり、わたしの新居が怪奇現象だった。主人はあり得ないと言うが、モノが落ちようと落ちまいと、事実は「片付けが増えること」だけである。わたしはそういう 思いで、淡々とやってきた。新倉イワヲの時代には、祓うって概念もあまりテレビに無く、キャー怖いで終わっていた。故に、そんなもんかと思っていた。

水を意味もなく、コップに入れてリビングに置いて、寝た日は、コップの水が半分になっていた。意味もなく、論理的理由もないまま、ごく普通に、置いておく 妻に、主人は非常に怖がったが、私自身は、「和尚さんが言ってたよ。あるものも、ないものも、そのままが世界だってさ」と。

故に、わたしの実家では、ひどく独特な風習を持っている。母がそれに固執する理由が分からなかった。けれど、息子を産んでみて、何となくわかる気がしてきた。 今になって、因果は大概片付いたので、昔ほどではない事、自分が家から出てみて、婚家の問題などを片づける間に、少しずつ、昔のあの凄さが薄れてきた。

けれど、今でも自分の地域が揺れる何分か前に目が覚める癖は直らないし、何か異変が起きる時の数分前にはやっぱり目が覚める。




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こんにちは。

昨日、何があったって訳でもないけれど、拾ったなって確信はあった。けれど、まぁいいかと思っていた。

寝る前に、自分で隠して選んだルースケースには、トルマリンが入っていて、「あぁ、そういうことなんだな」つまりは、かなり強い霊を拾ったんだと確信した。けれど、アプローチが全然こない。どうしたんだろうと寝た。

寝てから、真夜中に、自分が夢を見ててこれから面白くなる前に、頭の上で響く声がする。

「しょうがない しょうがないと思う しょうがない しょうがないと思う」

しかも、これ、トーン高め。わたしの地声よりちょっと高い。慌てて起きてみると、主人がいびきをかいている。彼は疲れると、いびきが激しくなるのだが、正直、これは聞いたら、ある年配以上の甲高い人の声で、

「しょうがない しょうがないと思う しょうがない しょうがないと思う。」

ずっとこれが寝室に響いている。自分の中で、これはリアルに聞こえる声だけに、寝室に響き渡る声のように聞こえる。なんで、誰も疑問に思って起きないんだろう。というか、この人の寝言でもない。本当に、あるおばあさんが、

「しょうがない しょうがないなと思う しょうがない しょうがないと思う」

延々、愚痴のようにお経のように唱え返している。
自分でどうしようかなと考えた。珍しいから、携帯で録音するか。というか、録音している場合じゃないよなぁ。流石に、寝室中に女性の声が響き渡っているんだもん。

主人を動かして、呼吸の方法を変えてもらうことも考えた。しかし、ちょっと好奇心のほうが勝った。なんで、女性の声で、何度聞いてもこう聞こえるいびきがかけるんだろう。逆に、これは、才能だよな。

時々、彼はいびきで、凄まじい怖い心霊現象のようなことをしてのける。故に、一度手術を受けてもらったのだが、こんな高音域初めてだ。

その後、諦めて寝たら、夢の中でおばあさんが、「しょうがない しょうがないと思う」と、お経のように叫んでいる。おばあちゃん、世の中、そんなにしょう がないと呟く「勉強料」ってのはあるもんだけれど、余程、己の所業が、納得いかなかったんだね。それは、私も体験したなぁと思って、夢の中でも付き合った。

気がつくと、下半身に一気に、蕁麻疹が出てきた。かゆい。かゆい。




彼のいびきシリーズには、「恨んでやる 恨みはらさずにおくものか 恨んでやる 恨み晴らさずにおくものか」ってシリーズが四六時中あったときには、流石 に、主人に、呼吸器の手術を勧めた。霊障と言う前に、そのいびき、問題だろう。だけれど、彼は元々、本当にいびきに、こっちが逆におきてしまうような、恐 ろしいシリーズが多い。故に、次男は何度も小突く。

「パパ、うるさいだの。」

怪談実話 無惨百物語 ゆるさない (MF文庫ダ・ヴィンチ)
黒木 あるじ
KADOKAWA / メディアファクトリー
2014-04-09

怪談実話 無惨百物語 はなさない (MF文庫ダ・ヴィンチ)
黒木 あるじ
KADOKAWA/メディアファクトリー
2014-06-24

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こんばんは。

死にたい死にたいって、よく口に出る奴がいるだろう。そうさ。あれらの半分は、死にたくなくて、誰かに構って欲しくて口に出しているけれど、半分位はどうだろうねぇ、死んでもいいやって思ってるんじゃないのかねぇ。

今すぐって覚悟は持ち合わせちゃいないんだろうけれど、どうだろうねぇ、あんがい、死んでみる気になったりするじゃないの。そそのかして、うんと怒らせたでもしたら、もう投げやりで、そのまま思いのままに、刃物を突き動かすのもおるねぇ。

あたしの役目は、それの肩をちょっと押すだけなんだよ。

人間、生きてりゃ、お天道様が照る日ばかりじゃないのにさ、どうだい、あれらは、いつでもお天道様があって当然だと笑うじゃないか。おかしいねぇ。おかしくないかい?死にたいと思うあれらに、お天道様は要るのかねぇ?あたしゃ、いらんと思うねぇ。

え?こりゃ、よく聞こえんね。もっと大きな声で言ってご覧よ。あたしを誰だと思ってんのかとね。ほれ、ほれ、もっと大きな声でいうてみんしゃい。あたしはあんたの気が向けば、迎えに来るつもりでここまで来たおひとよしだよ。ひとは死神ともいうがね。

あんたが望めば、もうこんな世なんかとおさらばもできる。その代わり、ちゃんと連れてってくれってぇ?人使いのあらい人だね。あたしには用事があるんだ。 あんたは、そのまんま、あたしの手伝いだけでね。ちょっとしばらく陰気臭い人間の臭気を嗅いで回ることしかできなくなるのさ。

怖いって言われてもねぇ。あたしからしたら、迎えに来てくれだの、やっぱ嫌ダ言うあんたのほうが怖い思いもするがの。

おや、旅支度はどうしゃった。


日本酒 死神 720ml
加茂福酒造

死神様と4人の彼女 (1) (ガンガンコミックスJOKER)
巣山 真
スクウェア・エニックス
2013-11-22

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こんにちは。

本日は、主人がドン引きするわたしのある日についてです。

わたし、実は、元々あんまり餡子って好きじゃないんですよ。「もなか」もそうですけれど、そんなに凄く食べたい訳でもない。と言うより、どっちかと言うとケーキが好きなのかな。で、ある日、買いモノに行った時、何だか凄く、餡子のおやつが食べたい。

わたしが、大福やもなかに見とれている間、その売り場の周りは、おばあちゃんで一杯だった。皆で、見とれて、どれにしようか考えていた。

結局、自分の理性を掘り起こし、ケーキが好きだから、ケーキにしておこうと考えて売り場を離れたんですね。理性ってのがあるから、私は衝動性に走らないんだと今までは考えていました。

ところが、その晩。やたらに食事の後に、餡子菓子が食べたい。ケーキでどうかと、砂糖でどうかと、砂糖なんてスプーンにすくって一杯なめてみた。自分の中 の、餡子へのオマージュは収まらない。どうしても、餡子でなければならない。何故か、無性に、餡子でならねばならなくて、ちょっと主人に買って来てもらう 事としました。

主人が言うんですね。ひょっとして、君は昨日、大福を食べたのを忘れたのかと。自分では思いだせないんですね。けれど、店が閉まる寸前に、夜中ひょっくり 起きて来て、「大福が食べたい。」と言ったんだそうなんですよ。で、買って着たら、やたら大福を褒めそやして、いそいそ自分でお茶を煎れて、大福をお皿に 乗せて、ひとり心地しているようだったんですね。それにドン引きしてた主人は、何で、今日も、スーパーで、餡子菓子の前に立っているんだか分からない。

けれど、やっぱり自分が買いに行く羽目になって、こう言うんですね。もう、大福なんて買わないよ。餡子のたっぷり入ったもなかでいいだろと。

買って来てもらえると、凄く餡子が輝いている(苦笑)。普段の自分じゃ考えられない程、餡子が凄く美しい。もなかをやっぱり、大事に皿に乗せ、お茶もいる だろうと考えた。もはや、こんな考え、普通のわたしにはない。普通のわたしだったら、そのまま、大福やもなかを食べて、牛乳飲んで終わりだ。

けれど、その日は、あんまりに涙が出るほど、餡子が食べたくて、買って来てもらえた(そもそも、いつもは自分で買いに出る)、その餡子が有難くて有難くてしょうがない。ひとり、お茶を煎れて、もなかを味わっていると、長男が叫んだ。

「お母さん、どこかのおばあちゃんみたいだね。」

・・・・・・・。
その一言で、ヘタレお母さんの理性スイッチが入った。
そう言われてみりゃ、おかしいじゃないか。自分で食べたがらないはずのモノを、何でお湯まで沸かして緑茶を煎れて、しかも、お菓子を皿に乗せて食べているんだ。一体、どこの人だ、わたしは何をしているんだ。

・・・・・・・。
けれど、餡子の甘さが口いっぱいに広がると、凄く涙があふれてきた。そうだ、こうやって、餡子を最期に食べたかった。我慢して我慢して、そうして食べない まま自分は終わってしまった。あぁ、なんて甘いんだろう。あぁ、なんて美味しんだろう。私自身の理性を吹き飛ばして、わたしは、すすり泣きながら餡子を食べていた。

その後、お茶をすすって(今回はすすり方に癖があったらしい)、餡子を身を持って美味しいと感じ、「ありがとうございました」と礼を主人に言って、そうし て、そのまま、ベッドに行って寝てしまった。もはや、息子も主人もこんなわたしに、慣れっこで、これがごく普通のお母さんだと思っている。

その翌朝、既に、餡子はいらない、やっぱりケーキ大好きな自分に戻っていた。自分の一生の中で、あんなに餡子が美味しく思える事は、もうないんじゃないか と思いつつ、恐らく、茶を飲む時に、あぁやってすする癖のあるおばあちゃんがいて、その方と共に餡子を味わったんじゃないかと思う。

しかしながら、あの餡子の味は、「天上の餡子」であった気がしてならない。自分ひとりじゃ、絶対味わえない味であったと思う。




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新ナニワ金融道 20 (SPA COMICS)
青木雄二プロダクション
扶桑社
2014-01-31

こんにちは。

あっ、タイトルからして、今日はごめんって思うんですけれどね。食事時はあまり読まないほうがいいかもしれません。

来客が着ていて、その片方の方で思い出したんですけれどね。前に、やけにそこを車で通ると、「XX組」って書いた札や、「ZZ連合」とか書いてあるステッカーを車に貼っている人がいたんですね。未だ、そっち方面に向かうと、高速道路、横見りゃ、893さんの車ですわ。

そこの近所にいた方がこう仰るんですよ。60越えてね、真顔で、「あそこの森には近づかないほうがいい。ろくろっ首がでるから。」って仰るんです ね。民俗学でもお馴染みの、婉曲な言い回しがありましてね。わたしは瞬時に思ったんですね。所謂、あんどんの油をなめに来る「ろくろっ首」ではなくて、「首吊り死体の惨状」を現したものだろうなって。

その当時、そんなに今より、知っている事も少なかったんですけれどね。うすうす、気がついていたんですよ。世の中の、妖怪って言われるものの半分に は、所謂悲惨な現状を、そういう言葉で封じ込めたものがあるんだなって。水木しげるの本には、大きな屋敷のかもいから、ぶら下がる妖怪がいるという。長男 は、日本帰国後の心霊物件で、梁とか、かもいとかなかったんですけれど、上からぶら下がる大きな顔を見ましてね。凄く驚いていたんですね。けれど、あれ も、婉曲に、その屋敷で、首吊りした人を表しているような気もしたんですね。

まぁ、実際、何でも見たがりなので、実際に、その森に子供を上手に散歩させつつ、行って見たんですけれど。そうですね。所謂、妖怪はいなさそうでしたね。首をつりたい人は、幾らでも呼びそうな立地でしたけれどね。

なんで、そんな事を思い出したのかって言われると、実は、わたし、トマトの苗を先日買い求めに言った先が、そこの近所なんですね。どうしても、その店の 苗がいいんですよ。今まで、丈夫に育ちましたのでね。主人が車を運転して行くんですけれど、どうしても、どうしても、そっちの森に向かってハンドルを切り 始めるんですよ。「おいおい」って心底思いましたけれど、あの人、「あれ、おっかしーなー。」って言いながら、どんどん、そっちに向かって進むんですね。

再度、行かないように、強引にUターンしてもらいましたが(涙)。

人間の首って、恐ろしいほど伸びるんですわ。実際に、そういう現場見た人は、ほんと、トラウマになりそうな程ね。人体って、凄いんですわ。考えられ ない状態を作り上げるんですわ。それを、ズバリ直球に言えなくて、婉曲な言い回し・・・・=民俗学の殆どや、妖怪の話だと思うんですね。そこまで、婉曲に 言わなきゃいけない惨状って、私も随分、人の死の場面に出くわしますけれどね。本当に、悲しくて、どう表現したらいいのか、けれど、子供たちに見られちゃ 困る勢いで、なんとなく、言って見ましたってことはあると思います。

あぁ、それより、もっと人が首をつりそうな場所の感じの方がどうなのかって?

うーん。それはなんとも言えないですね。つりたい人が吸い込まれるというより、その近辺の方々の商売の方が、重要なんじゃないですかね。きっと、清めても清めても、また濃くなりますって。そういう仕事が、あるんですよ。金貸しって言いますけれどね。

 

 

総員玉砕せよ! (講談社文庫)
水木 しげる
講談社
1995-06-07



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死者のための音楽 (MF文庫ダ・ヴィンチ)
山白 朝子
KADOKAWA/メディアファクトリー
2011-12-21

こんばんは。

息子が、なりたい職業になるには手相を見るといいと言い出したので、んじゃ見てもらおうかと思って手を出したら、彼らの診断は、右手で行うという。 違うんじゃね?と聞いてみたら、クラスにいる占い師の息子がそう言っていたという。というか、クラスにいる占い師さんは、手相見じゃない(苦笑)。お母さ んもそのオーソリティなんだよと息子に言うと、息子が言う。

「知っているって。お母さんは、医学と薬学と混ぜた人なんでしょ?」「違う。」「んじゃお母さんはなんなの。」

 

「お母さんは、幽霊に詳しい人です(笑)」

 

というところで、昔語りを人形劇でやってみた。まだ、ビクターのスタジオを使う人を手伝っていた時代のこと。そこは、出るって有名だったんだけれ ど、出るとは思わなかった。今考えると、湿気も程ほどあったし、電気は漏電しているし。条件的には、由来も、由緒正しい場所である。しかし、自分の目で見 るまでは、到底信じていなかったし、未だに、今も出るって言われたら、疑問になっちゃう。

その当時、仕事してた部屋の横の部屋の小道具が揺れて動いたので、人がいたと思い込んだわたしは、懸命に、隣の部屋の人に頼み事をしようと思って四苦八苦していた。

程なくして、わたしの奇妙な動きに気がついた人が、なんで隣の部屋にコンタクトを取ろうというのかと馬鹿にするような顔で言った。隣の部屋には、コンソール(ミキシングマシン)がある。隣には人がいないのだと、知っていた人が、胡散臭くわたしを見た。

わたしは、その部屋の小道具を指した。

明らかに、揺れている。

 

んじゃ、人がいるんじゃないの?と思って、ドアを開けて出て行ったら、誰もいなかった。誰もいないけれど、相変わらず、小道具は揺れていた。こ りゃ、地震じゃないかと思ったが、確認のしようがない。一緒にそれを見た人が、嫌がって、今日は帰るという。んじゃ帰ろうといって、その人の車に乗せても らって、近所のラーメン屋に寄った。ラーメン屋で、食券を買って、頼んだら、2人しかいないのに、水は3杯来る。

 

ラーメンも3杯来た。

 

食券は2つなので、ひとつは引き換えようがない。お店は慣れている感じで、頼んでいないラーメンを持って引き下がった。一緒に来た人は、完璧に驚い ているが、実はわたしはそんな経験が日常に多いので、あえて気にせず、ラーメンを食べた。帰り、その人はもう送ってくれないと言う。そこへ、ラーメン屋に 来たタクシー運転手さんが、送ってくれるという。

 

ありがたいので、都立大学までと頼んでタクシーに乗った。乗っても運転手さんは、相変わらずドアを開けている。なんで直ぐでないのかと思って聞いてみると、「ドアの所に、女の人が立っている。あなたの連れか」と尋ねられた。

無論だが、わたしの連れは、既につれなく、自分の自動車で帰宅したヤツだ。しかも、女性ではない。

ドアを見ても、人は見えない。なので、運転手さんは、何を見間違えたのかと思って聞いてみると、なんと、ミラーを見ろという。バックミラーで見た ら、確かに女の人がか弱そうに立っている。しかし、よく見たが、覚えがない。覚えがない奴のタクシー代まで払うのは不本意であるので、乗せたくはない。早 く帰りたい。

そうタクシーの運転手さんに告げたら、タクシーの運転手さんが言う。

 

こういうこと、この辺で多いんですよ。

 

わたしは、怪奇現象に慣れっこなので、そうですか、んじゃ行きましょうと言って、サッサとドアを閉めてもらって、うちまでタクシーを走らせて貰った。

タクシーの運転手さんが言う。

「彼女に反応を示さない人は初めて見た。」

「あの手の人は、割り勘でタクシーの乗るという習慣がないので、捨て置いていいと思う。」

「え?祟られるとか、怖くないんですか。」

「怖くはない。あの手なら、たまに、実家にくるから。」

「んで、どうやって送り返すんですか。」

「玄関先で、うちの父が怒り心頭でたたずんでいるのをみると、大概は、そこでいなくなる。」

「凄いお父さんなんですね。拝み屋さんかなにかなんですか?」

「いいえ、単なる物理博士です。」

「はなから信じていないから、現れないんですかね。」

「いや、深夜を過ぎて、娘が帰宅時間を守らなかったときの父のたたずまいは、幽霊も逃げ出すと思う。」

「そら、すごいですわ。」

「しかし、時々、家の中にはいってくる。」

「するとどうなるんですか。」

「怪奇現象が起こる。」

「怖くないんですか。」

「いや、普通にレコードをダビングしても、変な音が入るので、テープの無駄が惜しい。いいテープは高いし。」

「お客さん、若いのに、シビアですね。」

「あの手は、情けをかけても、無賃乗車、ただ飯喰らい、自己アピール満載ですから。相手してたら務まりません。」

 

さてそうやっているうちに、うちに着いた。

 

よく考えてみると、怪異現象が多すぎて、麻痺したとしても、あんまり、あのスタジオに近寄りたくないなと思って部屋への階段を上がっていった。よく 霧に煙る場所でもある。しかし、仕事が納期に仕上がらないほうが、スタジオ代などの経費にさし響くために、あえてすっ飛ばしていた自分のほうが、怖い存在 だったと今では思う。


主人は、交際半年目にして、達観した。婚約時代を、無駄に引き伸ばして1年置いてみたのだが、付き合って3ヶ月目で婚約になったの で、今となればよかったことだと思う。



しかし、実はあの当時のわたしは、実は、幽霊に見せかけたホログラムが写るミラーがあるんだと、信じて疑わなかったのは、実は内緒(笑)。幽霊話はタクシーの運転手さんの走行費ぼったくりの常套手段だと思ってたってことは、永遠の秘密(笑)。

ラーメン屋で、聞いたタクシー運転手の無賃野郎の情報交換について、驚愕の事態があった事は、またこの次に致しましょう。

 

 


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