死者のための音楽 (MF文庫ダ・ヴィンチ)
山白 朝子
KADOKAWA/メディアファクトリー
2011-12-21

こんばんは。

息子が、なりたい職業になるには手相を見るといいと言い出したので、んじゃ見てもらおうかと思って手を出したら、彼らの診断は、右手で行うという。 違うんじゃね?と聞いてみたら、クラスにいる占い師の息子がそう言っていたという。というか、クラスにいる占い師さんは、手相見じゃない(苦笑)。お母さ んもそのオーソリティなんだよと息子に言うと、息子が言う。

「知っているって。お母さんは、医学と薬学と混ぜた人なんでしょ?」「違う。」「んじゃお母さんはなんなの。」

 

「お母さんは、幽霊に詳しい人です(笑)」

 

というところで、昔語りを人形劇でやってみた。まだ、ビクターのスタジオを使う人を手伝っていた時代のこと。そこは、出るって有名だったんだけれ ど、出るとは思わなかった。今考えると、湿気も程ほどあったし、電気は漏電しているし。条件的には、由来も、由緒正しい場所である。しかし、自分の目で見 るまでは、到底信じていなかったし、未だに、今も出るって言われたら、疑問になっちゃう。

その当時、仕事してた部屋の横の部屋の小道具が揺れて動いたので、人がいたと思い込んだわたしは、懸命に、隣の部屋の人に頼み事をしようと思って四苦八苦していた。

程なくして、わたしの奇妙な動きに気がついた人が、なんで隣の部屋にコンタクトを取ろうというのかと馬鹿にするような顔で言った。隣の部屋には、コンソール(ミキシングマシン)がある。隣には人がいないのだと、知っていた人が、胡散臭くわたしを見た。

わたしは、その部屋の小道具を指した。

明らかに、揺れている。

 

んじゃ、人がいるんじゃないの?と思って、ドアを開けて出て行ったら、誰もいなかった。誰もいないけれど、相変わらず、小道具は揺れていた。こ りゃ、地震じゃないかと思ったが、確認のしようがない。一緒にそれを見た人が、嫌がって、今日は帰るという。んじゃ帰ろうといって、その人の車に乗せても らって、近所のラーメン屋に寄った。ラーメン屋で、食券を買って、頼んだら、2人しかいないのに、水は3杯来る。

 

ラーメンも3杯来た。

 

食券は2つなので、ひとつは引き換えようがない。お店は慣れている感じで、頼んでいないラーメンを持って引き下がった。一緒に来た人は、完璧に驚い ているが、実はわたしはそんな経験が日常に多いので、あえて気にせず、ラーメンを食べた。帰り、その人はもう送ってくれないと言う。そこへ、ラーメン屋に 来たタクシー運転手さんが、送ってくれるという。

 

ありがたいので、都立大学までと頼んでタクシーに乗った。乗っても運転手さんは、相変わらずドアを開けている。なんで直ぐでないのかと思って聞いてみると、「ドアの所に、女の人が立っている。あなたの連れか」と尋ねられた。

無論だが、わたしの連れは、既につれなく、自分の自動車で帰宅したヤツだ。しかも、女性ではない。

ドアを見ても、人は見えない。なので、運転手さんは、何を見間違えたのかと思って聞いてみると、なんと、ミラーを見ろという。バックミラーで見た ら、確かに女の人がか弱そうに立っている。しかし、よく見たが、覚えがない。覚えがない奴のタクシー代まで払うのは不本意であるので、乗せたくはない。早 く帰りたい。

そうタクシーの運転手さんに告げたら、タクシーの運転手さんが言う。

 

こういうこと、この辺で多いんですよ。

 

わたしは、怪奇現象に慣れっこなので、そうですか、んじゃ行きましょうと言って、サッサとドアを閉めてもらって、うちまでタクシーを走らせて貰った。

タクシーの運転手さんが言う。

「彼女に反応を示さない人は初めて見た。」

「あの手の人は、割り勘でタクシーの乗るという習慣がないので、捨て置いていいと思う。」

「え?祟られるとか、怖くないんですか。」

「怖くはない。あの手なら、たまに、実家にくるから。」

「んで、どうやって送り返すんですか。」

「玄関先で、うちの父が怒り心頭でたたずんでいるのをみると、大概は、そこでいなくなる。」

「凄いお父さんなんですね。拝み屋さんかなにかなんですか?」

「いいえ、単なる物理博士です。」

「はなから信じていないから、現れないんですかね。」

「いや、深夜を過ぎて、娘が帰宅時間を守らなかったときの父のたたずまいは、幽霊も逃げ出すと思う。」

「そら、すごいですわ。」

「しかし、時々、家の中にはいってくる。」

「するとどうなるんですか。」

「怪奇現象が起こる。」

「怖くないんですか。」

「いや、普通にレコードをダビングしても、変な音が入るので、テープの無駄が惜しい。いいテープは高いし。」

「お客さん、若いのに、シビアですね。」

「あの手は、情けをかけても、無賃乗車、ただ飯喰らい、自己アピール満載ですから。相手してたら務まりません。」

 

さてそうやっているうちに、うちに着いた。

 

よく考えてみると、怪異現象が多すぎて、麻痺したとしても、あんまり、あのスタジオに近寄りたくないなと思って部屋への階段を上がっていった。よく 霧に煙る場所でもある。しかし、仕事が納期に仕上がらないほうが、スタジオ代などの経費にさし響くために、あえてすっ飛ばしていた自分のほうが、怖い存在 だったと今では思う。


主人は、交際半年目にして、達観した。婚約時代を、無駄に引き伸ばして1年置いてみたのだが、付き合って3ヶ月目で婚約になったの で、今となればよかったことだと思う。



しかし、実はあの当時のわたしは、実は、幽霊に見せかけたホログラムが写るミラーがあるんだと、信じて疑わなかったのは、実は内緒(笑)。幽霊話はタクシーの運転手さんの走行費ぼったくりの常套手段だと思ってたってことは、永遠の秘密(笑)。

ラーメン屋で、聞いたタクシー運転手の無賃野郎の情報交換について、驚愕の事態があった事は、またこの次に致しましょう。

 

 


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